秘蜜の秘め事
「そりゃ、僕だって寂しいですよ?

先生がデビューした13年前からずーっと二人三脚で歩んで、家族ぐるみのつきあいをさせてもらって、たまに梨衣さんの手料理も食べさせてもらって…」

笑いながら思い出話を語っている相川に、僕は何と言葉を返せばいいのだろうか?

返す言葉がないと言うほど、今回のスランプはかなりひどいみたいだ。

「大丈夫ですって、先生にもちゃんと担当がついてきますから」

「…当たり前だ」

担当がつかなきゃ、一体どうなるって言うんだ。

相川の頭のうえに花でも生えているんだろうかと思って、僕は視線を向けた。

ないな。

「最近新しく入った方なんですけどね、先生と同じ38歳なんですって」

頼んでもないと言うのに相川は僕のところに新しくつくと言う担当の説明を始めた。

「へぇ」

耳だけは話に傾けることにした。
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