秘蜜の秘め事
リビングで僕が淹れたカフェオレを飲む彼女――古澤真琴(フルサワマコト)――ことビー子は、
「ビックリしたわ。

まさかあの“古沢真”がエー男だったとはね」
と、言った。

「僕以外誰だと思ったの?」

ソファーに座って尋ねた僕に、
「また同姓同名の人だって思ってた」

ビー子は笑った。

高校時代と変わっていない笑顔に、
「そうか」

僕は一言返しただけだった。

「何年ぶりに会ったかしらね?」

コトンとマグカップを置くと、ビー子は聞いた。

「最後にお互いの顔を見たのが高校の卒業式の時だから…」

「20年ぶり、ね」

僕の言葉をさえぎるように、ビー子が言った。
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