秘蜜の秘め事
梨衣は訳がわからないと言うように、僕の顔を見た。

「他に会社はあるんだ」

「そうだね」

梨衣はうなずいて、僕がつまんだイワシの唐揚げを口に入れた。

「美味しい」

梨衣は笑いながら口をモゴモゴと動かした。

彼女の笑顔に、ホッと気が落ち着いた。

僕が今スランプに陥っていることも忘れてしまうくらいだ。

「ところで…水曜日のことなんだけど」

話を切り出したとたん、梨衣の顔がこわばった。

「どうしても、水曜日じゃなきゃダメなの?」

「うーん…できればなあ…」

そう言った僕に、梨衣は考えるように目を伏せた。
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