秘蜜の秘め事
嵐のような攻撃的なギターの音が、僕1人になったリビングを支配した。

梨衣と言い、ビー子と言い…今日は一体何があったんだ?

さっきまで座っていたソファーに戻り、そばに置いてあったリモコンを手にとった。

それを音楽プレイヤーに向けると、曲を止めた。

それまで嵐のような騒々しさだったリビングが、静寂を取り戻した。

曲の続きを聞く気力もなくて、僕は音楽プレイヤーに歩み寄るとCDを取り出した。

それをケースにしまうと、元の場所に戻した。

大好きなバンドの、大好きな曲のはずなのに…聞く気力が起きなかった。

「恋の魔力って、すごいな」

自嘲気味に呟いて、自嘲気味に笑った。

どんなに大好きなバンドの大好きな曲でも、梨衣にはかなわないみたいだ。

そんなことを思った僕だったが、梨衣の胸の内に抱えている悩みに気づくことができなかった。
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