秘蜜の秘め事
映画館を出ると、熱い空気が僕らを包み込んだ。

冷房ですっかり冷えきってしまった躰には、ちょうどよかった。

「エー男」

ビー子が声をかけてきた。

「何だ?」

そう聞いた僕に、ビー子は目を伏せた。

「…今日はありがとう」

呟いているのかと思うくらいの小さな声で、ビー子がお礼を言った。

「えっ…あっ、ああ」

僕はうなずいて答えた。

「来週から、また新しい担当さんがくるから」

そう言ったビー子に、
「えっ?」

訳がわからなくて僕は聞き返した。
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