秘蜜の秘め事
「そ、そんなことないよ!

迷惑じゃないよ!

嬉しいよ!」

わたしは無理やり笑顔を作って、ビーフシチューを口に入れた。

母の表情は変わらなかった。

「梨衣」

母はわたしの名前を呼んだ。

カチャッと、スプーンを皿のうえに置いた音がリビングに響いた。

わたしもそれに倣って、スプーンを皿のうえに置いた。

「お母さんに話せないことでもあるの?」

静かに、だけどよく通る声で、母が言った。

わたしは思わず目を伏せた。
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