秘蜜の秘め事
パジャマ姿の母はバスタオルで髪をふいていた。

腰まで伸ばした母の真っ黒な髪。

母のまっすぐな性格が表れているようだった。

わたしの赤茶色の髪は、幼い頃に離れた父親譲りなのだ。

「梨衣、どこに行っての?

お風呂から出たら梨衣がいなかったから…」

心配そうな母の声に、
「お風呂入ってくる!」

わたしは逃げるようにバスルームへと駆け込んだ。

「あっ、梨衣!」

今母と口を聞いたら、間違いなくわたしは泣いてしまうかも知れない。

おかしいよね、相手は母親なのに。

なのに、泣いているところを見せたくないだなんて…。

わたしは自嘲気味に笑った。
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