秘蜜の秘め事

第6章

Tシャツを身につけると、ベランダの窓を開けた。

「暑いな…」

僕は呟いて、ベランダに足を踏み入れた。

隣のベランダに視線を向けた。

梨衣の家のベランダである。

そこから彼女が出てくる気配は、ない。

先ほどの、感情的になっていた梨衣を思い出す。

初めてだった。

今までつきあって、初めて感情的になった彼女の姿を見たのは。

僕はどうすることもできなかった。

名前を呼んだ後のことなんて、考えてなかった。

その時、カラカラと音を立ててベランダの窓が開いた。
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