秘蜜の秘め事
「あっ…」

ベランダに出てきたのは梨衣ではなく、黒い髪が美しいパジャマ姿の女性だった。

…あれ?

もしかしてとは思うけど、
「梨衣のお母さん、ですか?」

僕は声をかけた。

突然声をかけてきた僕に彼女は驚いたと言うような顔をした。

「あっ、すみません…」

前触れもなく、ただ姿を見ただけで声をかけた自分を反省した。

「もしかして…」

彼女が僕の顔を見ると、思い出したように言った。

「――古沢真さん、ですか?」
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