秘蜜の秘め事
僕は黙って、時子さんの話に耳を傾けていた。

「私は、思いました。

この子には、何があっても私と同じ人生を歩んで欲しくない。

好きな人と結婚して、幸せになって欲しい」

時子さんは涙で濡れている瞳を僕に向けた。

「梨衣をお願いします」

深く頭を下げた時子さんに、
「あの…」

僕はどうすることもできなかった。

「梨衣を、幸せにしてあげてください」

その言葉から、僕は娘に対する彼女の深い愛情を感じた。

離れていても、梨衣のことを深く思い、そして愛していた。

そんな母親の心を、僕は強く感じた。
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