秘蜜の秘め事
「何より、彼女には子供がいるし」

「結婚してるって、こと?」

僕はうなずいて答えた。

これくらいのウソなら、ビー子も許してくれることだろう。

「何だ…」

呟くように言った梨衣に、
「どうした?」

僕は聞いた。

「わたし、不安だったの」

梨衣が言った。

「不安…って?」

そう聞いた僕に、
「真が、古澤さんのところに行ってしまうんじゃないかって思ってた」

梨衣は呟くように答えた。

「もちろん、そんなことないって言うのはわかってる。

わたしは真が好きで、真もわたしのことが好き。

お互いがお互いを好きでいる限り、そんなことはありえない。

わかってたのに…不安、だったの」
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