秘蜜の秘め事
「わたしも真と一緒にライブに行きたかったな…」

梨衣の呟くようなその一言で、僕は現実に戻された。

ヴォーカルの独特な声とギターの激しいカッティングがリビングに響いている。

「僕は今梨衣と一緒にいる方がずっと幸せだけどね」

そう言った僕に、梨衣は顔を真っ赤にさせた。

「そ、そんなつもりで言った訳じゃないのに…」

梨衣はプイッと横を向くと、プリンを口に入れたのだった。

僕は笑った後、プリンを口に入れた。

5年前の今日、ネットのニュースで彼が亡くなったことを知った。

その日も僕は「シャンデリヤ」を聞きながらプリンを食べ、心の底から彼の冥福を祈った。

次の年も、その次の年も…そして、5年目を迎えた今も。

あの世で彼に会うことがあったら、梨衣と一緒に彼のギターを聞きに行こう。

5年目の7月22日、僕は彼を偲びながら密かに誓ったのだった。

☆★END☆★
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