会えるなら罰してください。
飛び降りる瞬間、彼女の手を掴めていたなら止めることが出来たんだ。
俺は未だ、彼女が飛び降りた理由が分からない。
だって前日まで彼女は笑っていたのに。
一緒に笑い合っていたのに。
手にしているグラスのウィスキーを一気に煽って、体をソファーに沈める。
一緒に暮らしていたマンションの一室。
広い。
彼女が居ないだけで、こんなにも広い。
どうして?
どうして気づけなかった?
グラスを壁に投げつけた。
バラバラに散らばった破片。
これで手首を切ったなら、彼女に会えるだろうか?
跡形もなく消えてしまいたくなるんだ。
けれどそれは許されない。
頭の中で彼女が俺を呼ぶから。
彼女の言葉が引き戻すから。
空に舞う直前の、
“あなたは私の分まで生きて”
彼女の言葉が。
残酷だよ。
俺も一緒に連れていってくれたら良かったのに。