青い猫の花嫁

「……そうだ。さっき藤屋さんでお菓子を買ってきてもらったんです。どうですか?お茶でも」


そう言って立ち上がったのは、正宗さんだった。

場所を変えましょう。
と、さっさと出て行く彼の後を、トワに手を引かれてよろよろとついて行く。


なんか、すごい疲れたな……。

立ち上がって初めてわかった。

あたし、足が震えてる……。



そうして、あたし達は、あたたかな太陽の陽が差し込む部屋に来ていた。

開け放たれた縁側からは、綺麗に剪定されたお庭がよく見えた。
あの梅の花が見えて、傍にはしだれ桜にもその枝に満開の花を咲かせていた。
大きな庭池の中、色鮮やかな鯉が、優美に泳いでいて。

春のうららかな風が、髪をすき、頬を撫でた。



「はーい。これ廉次さん特製のお茶だよ~。熱いうちにどうぞ」



ハッとして庭から顔を上げると、目の前にお茶と、美味しそうなお茶菓子が運ばれてきた。



「ありがとうございます……」

「どうぞどうぞ。甘いものは心も体も癒してくれるからね」



……はい。と頷いて、目の前に座る爽子を見上げた。


「ねえ、爽子……。大丈夫?」

「え?」


あたしの質問に驚いた爽子は、弾かれるように顔を上げた。

正宗さんが何かしてから、明らかに爽子は疲れ切っていたんだ。


< 103 / 323 >

この作品をシェア

pagetop