青い猫の花嫁
カランコロン
その時、お店の扉が開いて誰かが入ってきた。
「いらっしゃいませ~」
厨房から出てきたのは……あれ?廉次さんじゃない。
ふわふわのショートカット。
バイトさんかな……かわいい人。
ニコニコと笑顔でお店に入ってきた老夫婦を迎え入れると、奥の席へ案内した。
その姿を眺めていると、爽子が「あ」と声を上げて我に返った。
「洋子さんっ」
その声に、案内を終えた“洋子さん”が顔を上げた。
「さわちゃん!しょうちゃんも来てたんだ」
たんぽぽみたいな柔らかい笑顔を零した洋子さんは、あたしとトワに気付き、一瞬だけその目を見開いた。
「……ようこそ、toi_et_moi(トワ・エ・モア)へ。貴女が真子ちゃんね?」
「あ、はい」
名前を呼ばれ、慌てて頷く。
「さわちゃんからよく話は聞いてたの。ほんとだ、聞いてた通り、とってもかわいいのね」
「えっ」
か、かわいいっ!!?
ギョッとして爽子を見ると、ウンウンと嬉しそうにうなずいていた。
いったい、何を聞いてたんだか……。
頬がアツくなるのを感じて、あたしは苦笑いを零した。
「あ、注文とりにいかなくちゃ。ゆっくりしていってね?」
「はーい」
爽子が元気に返事をすると、洋子さんは踵を返して奥へ行ってしまった。
「あの人も物憑きだよ」
「え?」
松田くんの声に顔を上げた。