青い猫の花嫁
あの人も……。
「洋子さん、大学生だもんね。今就活忙しいんだって。あ、あとタツ兄もだ」
「タツニ?」
首を傾げると、トワは小さく小さくため息をついた。
「達央は別の意味で忙しいんでしょ」
「藍原、タツ兄の事は知ってんの?」
「知ってるって言うか……よく廉次といたのを見たくらい」
そう言ったトワの眉間にシワが寄った。
それからココアの入ったカップをテーブルに置き、気だるそうに椅子に身を投げ出した。
タツニイ…さんも、物憑きなんだよね。
その様子を横目に、厨房から出てきた洋子さんを見つめる。
「洋子さんが羊で、タツニが辰なの?」
「真子ちゃん、すごい!なんでわかったの?」
目を輝かせた爽子。
その横で、松田君までガバッと顔を上げた。
う……。
「……なんとなく」
「なんとなくであてるなんてすごいよ。やっぱり真子ちゃんは“約束の人”なんだね」
納得したように爽子は、松田君に同意を仰いでる。
だって、名前……。
なんて事は言わずに、あたしもココアをグッと喉に流し込んだ。
「あ、もうこんな時間……塾に行かなきゃ……」
時計を確認した爽子が、そう言って鞄を手繰り寄せた。
「真子ちゃん、もっとゆっくりお話ししたかったんだけど。明日、明日は何してる?」
「明日?」
キョトンとすると、爽子はたった今思いついたみたいに笑顔になる。