青い猫の花嫁
無邪気な笑顔が零れ、淡い水色の髪がふわりと揺れた。
トワと呼ばれた彼の声も、ワンオクターブ高い……。
まさにこれが、エンジェルスマイル……。
勝手に心拍数が上昇しかけて、ブルブルを首を振った。
「じゃ、早くね」
上機嫌のお母さんは、そう言って扉を閉めた。
「……っなな、なんでお母さんがっ……」
それ以上はあわあわなって言葉にならなかった。
だって、この人初対面でしょ?
昨日からいた?
うんん、あたし昨日ベッドに入ったのは、たしかに2時を回ってた。
その時間はもちろん家族も寝静まってたし……。
だから、絶対この人を知るはずないんだけど……。
すっかりパニックになったあたしを見下ろして、彼の表情が再び無機質なものに戻る。
「大丈夫だよ。ちょっとだけ記憶を置き換えただけなんだから」
「き、記憶?」
「俺がこの家に住んでるって事。君が一緒に来てくれるならこんなことしなくてもいいんだけど……。だから君は、早く俺を受け入れる努力をするよーに」
「……」
腕組みをしたまま、ビシッと指さされ、意地悪く睨まれた。
こ、怖い……。
その瞳は、なんの感情も宿していないようにも見えた。