青い猫の花嫁
キス、したい?
次の日
あたしは爽子に手をひかれ、大きなゲートをくぐっていた。
そこには真っ青な文字で、『マリンブルー』と書かれている。
最近できたばかりの、人気の水族館だ。
行先を任されたはずが、なぜか爽子と松田君にいつの間にか決定されていて、あたし達は電車で30分の海沿いの町までやってきた。
「修也!チケット買ってきて?4人分ねっ」
「は?なんで俺……」
爽子に、言われて文句を言いながらも松田君はしっかりと4人分のチケットを買ってきてくれた。
「つかなんで藍原のまで……。ん、ほらこれ」
「――、ありがとう」
トワは一瞬キョトン目を瞬かせて、差し出されたそれを受け取った。
「わあ、やっぱり春休みだね。すっごい人」
薄暗い館内に入ると、大きな水槽が目に飛び込んできた。
たくさんの家族連れや、カップルで賑わっていて、みんな楽しそうに何かを目で追っている。
あたし達もその人並みに混じって、大きな水槽を見上げた。
「あ、イルカの赤ちゃんだ。かわい~」
「ほんとだぁ。小さいね」
数頭のイルカが気持ち様さそうに泳いでいて、その中に小さな赤ちゃんを見つけた。
爽子と並んでイルカを眺めていると、隣に誰かが並ぶ気配がして顔を上げた。
あ、トワ……。
少し気だるように、水槽を見上げたトワ。
キラキラ光る水面を見つめて、眩しそうにその青い瞳を細めている。
トワの髪って、綺麗だな……。
水槽からの淡いブルーに、彼の髪が溶けていきそうで思わず息を呑んだ。