青い猫の花嫁
「……」
え、え?
あたしを囲うように手をついたトワ。
不意をつかれた至近距離に、息を呑んだ。
大人しくなりかけていた心臓が、思い出したみたいにドクンって飛び跳ねる。
なに?なんで?
ジュゴンを目で追うトワに、ドギマギしていると、不意にその視線を落とした彼と目が合った。
「真子?」
「っ!な、なに?」
トワの吐息が耳にふわりとかかり、心臓みたいに体まで飛び跳ねそうだ。
平静を装って尋ねると、少しの沈黙のあと、トワの透明な声が聞こえた。
「俺、わかんなかったんだけど」
「なにを?」
「真子さ」
「うん?」
「キス、したいの?」
「……」
は?
「はああ?な、な、なに、何言っちゃってんの?」
「真子があんな顔するから、俺どうしたらいいのかわかんなくて、混乱した」
「してない、してないそんな顔!」
混乱って言われても!あたしの方が、大混乱だよ!
トワの体温を背中に受けたまま、あたしは必死に首を振った。
あんな顔!!?あたし、そんなもの欲しそうな顔してたの!!?
ボンって真っ赤になったあたしに、トワは目をジトーッと細めて心底不服そうな顔をしたけど、今はそれどころじゃない。
トワから離れなくちゃ……。
「ほら、次行こう?爽子たちも行っちゃったし……わっ」
歩き出そうとしたあたしの手は、いとも簡単に捕まって、そのまま引き寄せられた。