青い猫の花嫁

イワシか……。

グルグルと渦をまくその群れを見下ろしていると、なんだか目が回りそうだ。


チラリと見上げると、それでもジッと見つめるトワがいて。


「美味しそうとか思う?」

「え?」


すぐにあたしへ視線を移したトワの目が瞬いた。

美味しそうとか思ってたのかな?ほら、猫ちゃんだし。
野生の本能とかでさ。

なんて思ってると、あたしの考えがわかったみたいにトワが眉間にシワを寄せた。


「俺、魚苦手」

「全部ダメなの?」


前にも言ってたっけ。たしか廉次さんのお店で……。


「んー……」

「トワ?」


眉間にシワを寄せたまま、またイワシを見下ろすトワ。

何考えてんのかな……。全部ダメって意味かな。

その横顔を見つめていると、いきなり手首を掴まれた。



「見て真子。北極ゾーンだって」



あ、話逸らした……。

楽しそうにそう言ったトワに、黙ってついて行く。


「俺、水族館初めてだけど、ペンギンもいるんだね」

「うん。でも寒いんだよ?」

「……、平気」


今の間は……。

ほんと、よくわからない。
でも、よくわからいからこそ、目が離せないよ……。



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