青い猫の花嫁


「あ、松田君あたし達のぶんまで買ってきてくれたんだ。ありがとう。えっと……お金……」

「あー、お金イイよ。今日はサワの提案で急に決まっただろ?だから俺らのおごり。お金より今度立花、勉強教えて?」


え?


何でもないようにそう言って、松田君はジュースのストローをくわえた。
「うえ、オレンジか」なんて少し眉間にシワをよせて、そのままホットドックにかぶりついた。

……松田君て、ほんと優しいな……。

最後のは、あたしに気を使わせないために言った口実。

その優しさが嬉しくて、松田くんらしくてなんだかにやけちゃいそうだった。
慌ててホットドックに手を伸ばす。



「あ、そうだ。1時半からシャチのショーだって。イルカも一緒にやるみたいだし、見に行こうね」

「シャチ?えー、楽しみ」



イルカのショーか……。
小さい頃に、おばあちゃんと見た気がするけど。

その水族館も、今ではなくなって、それから近くに水族館ってなかったから、本当に久しぶりだ。


楽しみ!


パク!っとまだ温かいホットドックにかぶりつく。
わ、美味しいっ。こうしてみんなで食べるから余計美味しいよね。


穏やかな昼下がり。
小春日和で、今日はとてもあたたかい。

空を見上げると、真っ白な綿菓子みたいな雲が、のんびりと浮かんでいた。



「あ、真子ちゃん。落ちる、」



へ?

気が付くと、反対側からタレが零れ落ちそうになっていた。
しかも、ソーセージまで。



うわわ、よそ見してる場合じゃなかっ……。

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