青い猫の花嫁
バシャ――ン!
『はい! それではイルカたちの背面ジャンプ!』
大きなプールから、3頭のイルカがほぼ同じタイミングで飛び出した。
そのたびに歓声が上がる。
会場は満員御礼。
あたし達は、プールにほど近い場所でそれを見ていた。
なんとか上下段であいてる席を見つけたんだ。
テンポ良く進んでいくパフォーマンスに息つく暇もない。
高い場所にあるピンク色のボールをイルカがタッチしたり、トレーナーを背中に乗せて泳いだり。
「ほんとイルカってすごい!かわいいね~」
しっかりと指示を理解しているイルカに感心して、隣を見上げた。
「ここ、水かからないかな」
「……」
真顔でそう言ったトワは、イルカがどんな動きをするとかじゃなくて、そっちの方が気になるみたいだ。
そ、そりゃそうだよね。
「ここは大丈夫だよ。ほら、あんなに近くでイルカがジャンプしても飛んでこないもん」
大丈夫だよね……。確かにこんな場所で水なんかかかって、猫ちゃんになちゃったら、きっと誰かに見つかってしまう。
それだけは絶対にダメだ。
そんなのが見つかったりしたら、トワは掴まって、その体を隅々まで調べられて、どこかの研究室に連れて行かれて、何されるかわかったもんじゃない。
あたしまで急に不安になって、プールを眺めるトワから視線を外した。