青い猫の花嫁
「トワっ!」
いた!トワだ!
2階の窓が開いてベランダに姿を現したのは、空色の髪。
たった1週間。
1週間会えなかっただけなのに、こんなにも嬉しいなんて。
込み上げる想いに、あたしはブンブンと大きく手を振っていた。
もちろん、そこには蒼穹の瞳を見開いたトワがいて。
でもすぐに、その瞳は冷たいものへと変わってしまった。
え……?トワ?
喜んでくれるって思った。
もし、勝手におじいさんの家に来た事をよく想わなかったとしても。
あたしには、照れくさそうにはにかんでくれるって、勝手に思ってた……。
それからすぐに、部屋に戻ってしまったトワ。
「っはは。めちゃ驚いてたな」
「ほーんと。これはみんなで来た甲斐あったね」
爽子と、松田君が楽しそうに話すのを、あたしは茫然と聞いていた。
来た甲斐あった?
そう、かな……。
あたし、トワが降りてくるの、怖い……。
心臓が、ドクンドクンって鈍い音でなる。
そんなあたしの隣に並んだのは、郁くんだった。
郁くんはあたしとは視線を合わせずに、トワの消えた2階のベランダを眺めている。