青い猫の花嫁

「トワっ!」


いた!トワだ!

2階の窓が開いてベランダに姿を現したのは、空色の髪。


たった1週間。
1週間会えなかっただけなのに、こんなにも嬉しいなんて。

込み上げる想いに、あたしはブンブンと大きく手を振っていた。


もちろん、そこには蒼穹の瞳を見開いたトワがいて。
でもすぐに、その瞳は冷たいものへと変わってしまった。


え……?トワ?

喜んでくれるって思った。

もし、勝手におじいさんの家に来た事をよく想わなかったとしても。
あたしには、照れくさそうにはにかんでくれるって、勝手に思ってた……。


それからすぐに、部屋に戻ってしまったトワ。


「っはは。めちゃ驚いてたな」

「ほーんと。これはみんなで来た甲斐あったね」


爽子と、松田君が楽しそうに話すのを、あたしは茫然と聞いていた。


来た甲斐あった?

そう、かな……。
あたし、トワが降りてくるの、怖い……。


心臓が、ドクンドクンって鈍い音でなる。
そんなあたしの隣に並んだのは、郁くんだった。
郁くんはあたしとは視線を合わせずに、トワの消えた2階のベランダを眺めている。

< 150 / 323 >

この作品をシェア

pagetop