青い猫の花嫁
松田君のとってくれたお肉をパクリと口に放り込んだその時、視線を感じて顔を上げた。
ん?
って、あれ? 見られてない。
みんな目の前のお鍋に夢中で、あたしの事なんて見ていない。
トワだって、相変わらず世話をやく松田君を、黙って受け入れてる。
あたし、やっぱりちょっと自意識過剰かも。
恥ずかしくて、口の中に白菜も放り込んだ。
ん。美味しいなあ。
「藍原ぁ、ほらほら熱いうちに」
「俺言わなかった?熱いのヤダって」
「そうだったかぁ?」
このふたり……仲悪いの?いいの?
ウンザリしたように綺麗な顔を歪ませるトワ。
それでも時々見せる笑顔に、さっきから心臓がドキドキして落ち着かない。
うう……、ダメだぁ。
あたし、どうしちゃったんだろう……。
ユラユラ揺れる真っ白な湯気が、赤く染まった頬を隠せばいいって本気でそう思った。
みんなで楽しくお鍋を食べて、これまた広いお風呂を爽子とふたりで入った。
「はあ……なんだか思いのほか、旅行気分だね」
「ん。ほんと」
火照った頬でニコリと笑った爽子は、ベッドへダイブした。
「藍原くんのおうちは、すごいね~。部屋、一体いくつあるんだろうね」
すでに眠たそうな爽子。
枕に顔を埋めて、すっかり目を閉じてしまっている。
幼いその顔に、思わず笑みが零れた。
爽子に布団をかぶせて、あたしもゴソゴソと布団にもぐりこんだ。
トワとは、結局話できなかったけど、明日朝早く会いに行ってみよう。
「真子ちゃん……」
「ん?」
むにゃむにゃと言う爽子。
隣のベッドに寝転んだ爽子は、薄く目を開けてあたしを見た。