青い猫の花嫁

「泣いてるの?なんで?」

「自分の気持ちがわかって、嬉しいの」

「……気持ち……」



まるで子供みたいに、あたしの言葉を繰り返したトワは、切なそうにその瞳を細めた。



「そう、よかったね。真子」

「トワ?」


なんか投げやり……。

いつものトワなら、「なにそれ。どういう事?」って必要以上に聞いてくるハズ。


それなのに、今日のトワは口元を緩めて笑顔を見せている。
これは……猫かぶる時の、笑顔だ。



「ねえ、トワ。なに怒ってるの?」

「なにが?」

「なにって、今日ずっと怒ってる。あたし達が突然来ちゃったのは、そりゃ悪いと思ってるよ?それでも、みんなトワを心配して……松田君が総司朗さんとかに聞いてくれて……それで」

「――だから?」


え?

いきなり目の前に影が落ちて、気が付いた時には、トワの顔が目の前まで迫っていた。

背中に感じる、ヒンヤリとした感触。
壁に両手をついたトワに、逃げ場をなくされ、息を呑む。


トワ?

怒ってる……。

掠めた前髪から、彼の放つオーラから、怒りが伝わってきた。



「俺はそんなの望んでないよ。そんな感情(モノ)は要らない」

「……」


いらないって……。




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