青い猫の花嫁
それから、トワに部屋まで送ってもらって、あたしは眠れない夜を過ごした。
去り際に、軽くキスをされて……ふわりと笑ったトワ。
あたしの気持ち、通じたんだよね……。
「……はあ」
それなのになんなんだろう、この気持ち……。
「…、……、ん?真子ちゃーん、立花真子!」
「は、はいッ」
いきなり目の前に仁王立ちした爽子が現れた。
「て、あれ……爽子?」
「あれぇ?じゃないよぉ。朝だよ?ご飯だよ?何回呼んでもボーっとしてるから置いてっちゃおうと思ったんだからね」
「あ、ごめん!」
慌てて起きて、洗面台へ急ぐ。
ジャブジャブと冷たい水で顔を洗うと、ぼんやりとしていた頭の中がはっきりとしてきた。
ふわふわのタオルで、顔を抑えてそっとため息をつく。
鏡の中の自分は、情けないほど泣きそうな顔をしていた。
……寝不足。目、真っ赤だし。
もう一度キュッとタオルで水けをふいて、クシャクシャの髪にクシを入れた。
「トワの、バカ……」
―――ひとついいかな
まるで耳元で響く、透明な声。
それは囁くようにそう言って、ためらいがちに放たれた。