青い猫の花嫁
「藍原、明日は絶対来いよ」
そう言って、トワの肩をポンッとたたいたのは松田君だ。
「行こ。マジで遅れちゃう」
「え?あ……」
振り返った松田君が、クイッとあたしの腕を引く。
もう、トワってば。
面倒なんて……。
水族館に行く時は、来てくれたのに……。
昨日の事、話したかったんだけどな。
仕方ない。
「じゃ、また連絡するから。電話、出てね……わっ」
そう言って振り返ったあたしは、一瞬何が起こったのかわからなくて、フリーズしてしまう。
トワがソファから立ち上がって、ズンズンと歩いてきてたのが見えて……。
気が付いたら、トワの手に引かれて玄関とは逆方向に進んでいた。
「俺も行く。支度するから皆、先に行ってて」
「トワ?」
行くの?
手を引かれるまま、茫然としていると背中から楽しそうな声が。
「んじゃ、俺達先行ってるから、早く来いよ!」
「またあとでね~」
さっさと出て行く松田君と、無言で爽子の手を引くカナトくん。
彼らとあたし達を、交互に見ていた郁くんは苦笑いを零して、「それじゃ」と頭を下げて出て行った。
玄関からは、トワのおじいさんの元気な声がする。
それでもトワは足を止めずに、無言のまま自分の部屋まであたしを引っ張って行った。