青い猫の花嫁
郁くんは、すぐにあたし達に気付き一瞬だけ動きを止めた。
「やっぱり来たね~。郁くんは?何飲む?」
「僕はいいです。それよりカナト」
ニコニコ顔の廉次さんの言葉をきっぱりと拒否して、郁くんは爽子の隣に座るカナトくんに視線を投げた。
カナトくんはそれがわかっていたみたいに、苛立たしげに目を細めた。
「おばさんが呼んでたよ」
「うるせぇな。こっちはシカトしてんの」
「……、でも、それだと余計に怒るんじゃ……」
「郁!オメェもいちいち俺に構うな」
困ったように、カナトくんの横顔を見つめる爽子。
郁くんも小さくため息を零した。
「……あの、カナト。ちゃんとおばさんと話しなよ。じゃないと、」
そこまで言った郁くんの言葉を、カナトくんは無言で制止、メロンソーダを一気に飲み干すと乱暴に席を立った。
「爽子、行くぞ」
え?と驚いている爽子の手を掴むと、カナトくんはさっさとお店から出て行ってしまった。
カランコロン……。
ドアベルが、虚しく響く。
残されたのは茫然としたあたしと、ため息を零した郁くん。そして、ニコニコした廉次さんの3人だけ。
「若いよね~。まあでも、相手を想う気持ちだけで突き進むあたり、どこかの誰かさんとは違うけど」
「え?」
空席になったソファに腰を落としたのは、廉次さんだ。