青い猫の花嫁
「なんで?」
「え?」
一瞬、トワが何を言ってるのかわからなかった。
なんで?……なんでって、そんなの決まってるよ。
だってあたし。
「トワの事、好きになっちゃったんだもん」
優しいトワ。
いつもそばにいて守ってくれたトワ。
この気持ちを、大事にしたい。
人を好きになったこの気持ちを、あたしは大切にしたいから。
「俺も好きだよ。でも真子、それは俺が猫憑きで、俺のお嫁さんにならなくちゃいけないって思うからでしょ?」
絡み合う視線を先に解いたのはトワ。
猫憑きだから?
「違う……それ、違うよ!たしかに最初は、そうだったかもしれない。でも……あたしはトワだから好きになった。トワが相手じゃなきゃ好きにならなかったよ?」
「……真子」
目を細めたその笑顔がどこか辛そうで。
あたしの気持ちは、トワにとって迷惑なの?
わけが分からなくて、もどかしくて、喉の奥が痛くて。
唇をギュッと噛みしめた。
「……正宗からきいてない?運命の日の、その後の話」
「運命の日?それって、来年の1月1日……」
「そう」
コクリと頷いて、トワは再びあたしの手を引いて歩き始めた。
茜色に輝く太陽はとっくにその姿を消して、なおも空は淡いピンク色に輝いている。
あたし達の周りの影が消えて、何もかもあやふやだ。
みんなの楔が解けた後は……万事うまくいくんでしょ?
正宗さんがそう言ってたように。
前を行くトワに追いついてその横顔を見上げると、トワはそっと頷いた。
「特異体質からの解放。……でも、それには代償があるんだよ」
「……代償?」