青い猫の花嫁
「爽子」
突然、声がして慌てて振り返った。
あ……。
ふわふわの髪が、風に持ち上がり、少し面倒臭そうに歩いてくるのはカナトくんだった。
と、その後ろから郁くんも顔を出した。
「探した。メール返せよ」
眉を寄せてジロリと視線を落としたカナトくん。
「あ……ごめんね?」
「……ま、いいけど」
苦笑いを浮かべた爽子に、小さくため息を零すと、カナトくんがふとあたしを見た。
?
でもそれはすぐに外れて、カナトくんは爽子の隣に腰を落とす。
う。
カナトくんってやっぱりとっつきにくい。
でも、最初みたいに尖った感じはないから、少しはあたしにも心開いてくれてるのかな?
そんな事を考えながら無言で並ぶ2人をしばらくぼんやりと眺めていて、我に返った。
はっ!
あたし、お邪魔だよね。
慌てて広げていたお弁当をしまって、勢いよく立ち上がった。
それを驚いたように見上げる爽子。
「爽子、またあとでね?」
「え?あ……真子ちゃん……」
「あたし先に行ってるから!」
少し離れた場所で立ってこちらを見ていた郁くんの腕をつかむと、あたしは爽子に手を振った。
「え?え、あ、真子さん?」
「ほらほら。あたし達は行くよ」
ギョッとしている郁くんの腕を引いて、そのまま中庭を後にした。