青い猫の花嫁
「おはよぉ、真子ちゃん」
そこでポンッと肩を叩かれ、ハッとして顔を上げた。
見ると、緩く編み込みされた栗色の髪が揺れていた。
「すごい野次馬の数。みんな藍原くん目当て……だよね」
こっそりと耳打ちしてきたのは、爽子だった。
あたしは苦笑いしか返せなくて、「だよね」と爽子の言葉をおうむ返しした。
きっと今まで松田くんと一緒にいたんだろう。
授業が始まるギリギリになって戻ってきた爽子は、自分の席にいかずそのままあたしの元へやって来た。
「あとで詳しく教えてよね」
そう言って嬉しそうに笑うと、跳ねるように自分の席へ向かった。
詳しくとか……教えて欲しいのはあたしの方で。
なんて思ってると、教室に先生が入ってきて授業が始まっていた。
なんだか、びっくりする事がいっぱいすぎて。
松田くんと爽子の事、すっかり忘れてた。
ようやく静寂を取り戻した教室。
チラリと隣の席を盗み見ると、椅子の背に体を投げ出したトワがいて。
その視線は、真っ直ぐ前を見据えていた。