青い猫の花嫁
ホッと胸をなで下ろしたあたしは、ジッと見られているような視線を感じて顔を上げた。
ぼんやりした郁くん。
あたしを見ているようで、見ていない。
「郁くん、どうしたの?」
「え?な、なな、なんですか?」
あたしよりほんの少しだけ目線の高い彼は、たった今夢から覚めたみたいに目を見開いて、バッと口元を腕で覆うと、すぐに顔を背けてしまった。
「ね、顔真っ赤だけど郁くん、熱でもあるんじゃ……」
「な、ななな、ないです。大丈夫です。だから、あの……」
彼の腕を掴んで、おでこに手を伸ばそうとしたあたしを、潤んだ目で見下ろした郁くん。
「は、離してください……」
力なくそう言って、すぐに視線を外してしまった。
本当に体調が悪そうだ。
触れた腕が、熱い気がするのはたぶんそう。
思い切り身をのけぞらせた彼の顔を覗き込もうとした、その時だった。
「なにしてるの?」
いきなり背後で声がして、振り返ったそこには、眉間にシワをよせたトワがいた。