青い猫の花嫁

「トワ!今日は来れたんだね!」


久しぶりに会えた嬉しさに、思わず笑顔になる。

そんなあたしを、トワは相変わらず無表情で見つめさらにふと視線を外した。



「……俺、邪魔だったかな?」

「え?」


邪魔?なんで?

首を捻ったその時、いきなり誰かに肩をグイッと押された。



「わっ」


え、な、なに?

思わず固まったあたしを肩を掴んでいたのは、郁くんだ。
俯いた彼の顔は、よくわからなくて、強引に距離を取られたみたいだった。


「じゃ、じゃあ、僕、行きます……」

「あ、郁くん!待って、熱……」


言い終わる前に、郁くんは砂埃を巻き上げて物凄い速さで走り去ってしまった。
彼の背中を追って思わず伸ばした手が、虚しく宙をまう。


「大丈夫かな……」


ひとりごとのように言って、ハッとしてトワを見た。


すぐ少し後ろに立っていたトワは、腕組みをしたまま郁くんの背中を追っているようだった。

あたしの視線に気づかずにいるトワを、思わずジッと見つめてしまった。



青空色の、柔らかな髪。
夏に溶けて、キラキラしてるみたい。

あれ、ちょっと日に焼けた?

透明な肌は、色を濃くして少しだけトワを大人びて見せていた。


中性的で綺麗な顔は、ため息が出そうなくらい整っていて。
ゆっくりと瞬きを繰り返す長い睫が、前髪を揺らしていた。



……はあ……
なんか、なんか胸がギュってする……。


横顔にキュンとして、いつの間にかトワがあたしを見下ろしているのに気が付かなかった。


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