青い猫の花嫁
あ……。
蒼穹の瞳の中に、我に返った自分と目が合った。
「げ、元気だった?もう夏休みだね。トワはどこか行くの?」
「……」
「え?あ、ちょっ……」
見つめ合っていた事に動揺していたあたしの手首が、強い力で引かれ、あっという間に木陰に連れ込まれてしまった。
―――トン
「……トワ?」
ヒンヤリとした木の感触を背中に感じて、息を呑んだ。
トワはあたしを囲うようにして手をつくと、その綺麗な眉間にシワをよせる。
「ど、どうしたの?」
「わかんないの?」
は?
背の高いトワに見下ろされ、威圧的なオーラを感じながらオズオズと顔を上げた。
遠くから、他の生徒の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
風が、木々を揺らして、サラサラと木漏れ日が躍る。
ドクンって心臓が勢いよく鼓動を打って、あたしの視線はトワの唇に釘付けになった。
き、キス?
キスされるの?あたし……!
思わずギュッと目を閉じた瞬間。
ん?
いきなり目の前が明るくなった。