青い猫の花嫁

「……」

「……」


うぅ……消えたい。
目を見開いたまま、固まってるトワの前から消え去りたい。

押すことも、引くことも出来ずただ身動きが取れずにいると、タイミングよく予鈴が鳴った。



「やば。次移動教室だった。じゃああたし、先に行くね」



パッと手を離して、そのままクルリと背を向けた。

笑顔、笑顔。
本当はギギギって音がしちゃいそうだけど、なんとか笑えたかな、あたし。


「またね、トワ」


思わず逃げるように踏み出したあたしの足。

でもそれはすぐに止められて、グッと手が掴まれていた。



え?

振り向いたその時。

首の後ろから、髪の中に滑り込んできた手がバランスを崩したあたしを支えた。


瞬間、ふわりとかすめる、甘い香り。


「んっ」


唇に押し当てられた、柔らかな感触。


予鈴が響く。

遠くなる、笑い声。

時間が止まった気がして、あたしは瞬きも忘れてただ固まっていた。




「……」


名残惜しそうに離れた唇。

おでこを合わせたまま、覗き込むようにあたしを見るトワの目がジトっと細められた。

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