青い猫の花嫁


「へへ……」

「真子?」


嬉しくて、思わず顔がほころんでしまう。
そんなあたしに、不思議そうに首を傾げたトワ。

トワはやっぱり優しいよ。

そんなトワにどんどん惹かれてるあたしがいる。


夜空を見上げると、優しい光を放ちあたし達を見下ろしてる満月。
トワも同じように空を仰ぎ、その瞳をグッと細めた。


「綺麗だね……」


ため息まじりにそう言うと、しばらく黙って見上げていたトワがぼんやりと言った。


「きれい……?」

「あ、ほら。ウサギが見える」


影がそう見える事はもちろん知っていたけど、あたしは嬉しくなってなぞるように指差した。

ふふ、うさぎがお餅ついてる。
確かにそう見えるよね。

そんな事を考えていると、まるで独り言みたいなトワの声がした。


「……寂しいよね」

「え?」


心ここにあらず。

月を仰ぎ見るトワの瞳は、もっとずっと向こう側を見ているようだった。


「だってさ、あんなに遠い星でずっとひとりでいるんでしょ?
寂しいと思うな」


その言葉が、なぜか胸を締め付ける。
トワは、あのうさぎに何を見てるの?

たまらずあたしを身を乗り出していた。


「ひ、ひとりじゃないよ?
ほら、よく見て?お餅ついてる向かい側にもうひとりいるでしょ?
お餅をね?返してくれるウサギが居るの。
ひとりじゃお餅つくの無理だし、だから、あの子はひとりじゃないんだよ?
ふたりならきっとさみしくないよ」

「…………。うん」


キョトンとして、うなずいたトワ。

あ……あはは。
いくらなんでも……そんな事わかってる、よね。

いきなり必死になって言った自分が恥ずかしくて、たまらず俯いた。



その時だった――――。


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