青い猫の花嫁
「大丈夫かな…、トワ」
少し前を歩いている松田くんに、こっそりを耳打ちした。
その声が届かなかったのか、松田くんは「ん?」と顔を寄せてきた。
ふわりとかすめる、甘い香り。
なんだろう、柑橘系のいい香り……。
なんだかドギマギしてしまって、慌てて俯いた。
「あ、雨、降りそうだけど……」
「あー、藍原な。サワもいるし、総司郎さんも何だかんだで気にかけてるハズだから。そのへんのフォローは心配ないよ」
力強くそう言われ、ホッとしてよかったって笑った。
化野念仏寺の無数の石仏が立ち並ぶ境内を半周すると竹林の小道が現れた。
幻想的な雰囲気が漂っていて。
静寂で神聖な空気が辺りを満たしている気がした。
わぁ……。
うーんと両手を広げて肺いっぱいに空気を吸い込んだ、その時だった。
―――グイ!
いきなり背後から腕を引かれ、あっという間に一緒に歩いていたグループから離れしてしまった。
え?