青い猫の花嫁

見ると、そう言ったのは郁くんだった。


「それだけが“契りをかわす”って事だとは決まってないんだよ?」


まだあどけなさの残る郁くんが、冷静にカナトくんに言った。


わ。郁くんがこんなふうに人に意見するのって、初めて見たかも。
いつも少し不安気で、誰かの後ろを見てる。そんな感じだったから。

でも、そんな郁くんに驚いているのは、あたしだけじゃなかった。
最後のフロートをスプーンにすくい上げたままのカナトくんの瞳も、また大きく見開かれていた。


「……。お前もバカなの?なんでもいいから可能性ある方法試さないとダメだろ」


切れ長の瞳をグッと細めて、カナトくんは郁くんを睨んだ。
それでも郁くんはひるまずに口を開く。


「なんでもいいなんて事ない。ましてや男女の関係になる事で僕たちの体質が変わるなら、そんなの変だ」

「……郁、テメェ。何熱くなってんだよ」

「なってない。カナトこそちゃんと考えなよ。全部任せるんじゃなくて」

「ああ?」



ちょ、ちょっと……。
次第に強くなるふたりの口調に、思わず身を乗り出そうとしたその時。


「はいはーい。そこまでっ」


明るい声で、ピシッと止めに入ったのは、廉次さんだった。



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