青い猫の花嫁

「……先生……」


スーツのポケットに手を入れたまま、先生はため息を漏らす。


「行ってどうする」

「……」


あたし達がどこへ行こうとしてるのか、すべてお見通しだ。
押し黙ったあたし達を、先生は真っ直ぐに見下ろした。


「お前たちが行って、何が出来るんだ」


もう一度強く言われ、あたしはギュッとスカートを握りしめた。


「大切な人がいなくなったんです!誰かがそばにいないと……」


少しの間をおいて、先生は目を伏せた。


「……。修也、爽子、お前たちは教室に戻れ」

「え?で、でもあたし達、」


爽子が言おうとして、松田君がそれを止めた。


「行こう、サワ」

「……、うん」


爽子がキュッとその唇を噛みしめて、頷くと、松田君が一瞬あたしに視線を送って、そっと肩をたたいた。


ふたりが行ってしまうと、先生は背中を向けてしまった。


「あの、先生」

「来い」

「え?」

「話がある」


短くそう言って、先生はさっさと行ってしまった。

慌ててその後を追う。

しばらく無言で歩いていた先生だったけど、人気のない廊下の踊り場で突然振り向いて、目の前に何かを差し出した。


それは、真っ白な封筒だった。




「……お前は、猫憑きと言うのが、何を背負っているか知ってるか?」



え?



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