青い猫の花嫁
「背負ってる、モノ?」
「そうだ」
目の前の封筒を受け取ると、先生のその手は再びズボンのポケットへ戻った。
そして、窓から外へと視線を向けた。
……わからない。
あの猫が……トワが何を背負ってるのか……。
窓の外には、すっかり葉の落ちてしまった桜の木があって。
先生はその枝越しに空を見上げている。
「代償の事は」
「……、はい。十二支に関わった人たち全員、忘れるって……大切な人の事……」
言葉にして、喉の奥がジリと熱くなった。
「それは違うな」
「え?」
きっぱりと言い切った先生の言葉に目を見張った。
「でも、でもトワはそう言ってました。楔がとけなかった時の代償は、忘れちゃう事だって」
「……忘れてしまうのは」
先生は、ゆっくりと振り返ると、真剣な瞳であたしを見つめた。
「藍原の事だけだ」
「……」
……え?