青い猫の花嫁
い、いつの間に……。
全然わからなかった……。
まったく気配がしなかった事に驚いた。
サラサラと笹の葉がゆすれる音が、まるで耳元で聞こえるみたい。
体と思考が、なんだか別物になっちゃったみたい。
と、その時。
まっすぐにあたしを見下ろしていた男の人は、何か思い出したように口を開いた。
「……立花真子さん?」
「え?」
何で名前……。
答えることが出来ずに、黙っているとあたしがここに来た事がわかっていたみたいに、彼はニコリと微笑んだ。
「……いやぁ、よく来てくださいました。三國はあなたを歓迎します。ほらほらどうぞこちらに」
「え?あの……きゃっ」
まくし立てるように言われ、彼はあたしの腕をつかむと大きな門をドカリと開けて敷地の中へ突き進んだ。
玄関までやたら長くて途中には、綺麗に剪定された松や植木の数々。そして池まで見えて、そのわきには茶室らしきものまであった。
すごいおうち……。
周りを見るのに忙しく、茫然としていたあたし。
まるで引きずられるように連れて行かれた、その先はさきほど見えた。茶室のようだった。