青い猫の花嫁
はあっ はあっ はあっ
どうやってここまで来たのか覚えていない。
ただ、無我夢中だった。
懐かしい駅を降りて、相変わらず人気のない商店街を横目に山道をかけのぼる。
足がほつれても、絡まりそうになっても
冷たい空気にむせそうになっても、あたしは走るのをやめなかった。
はあっ、はあっ、
見覚えのある紅い屋根。
山の中腹にひっそりとたつその家は、まるで忘れ去られたかのようにさびしかった。
―――ジャリ……
足を踏み入れて、見つけた。
愛おしいその姿を。
トワは、ひとり家の前に立ち、ぼんやりと空を眺めていた。
すぐにあたしに気付いて、蒼穹の瞳が細められた。
それはどこか虚ろで、あたしを見ているようで見ていない。
遠くへ行ってしまう。
そんな気がして、あたしは思わず駆け出した。
「っ!」
そのままトワに腕を回し、力の限り抱きしめる。
お願い、トワ……ひとりで行かないで!