青い猫の花嫁


「……真子?」

「トワっ、行かないで……」


驚いたようにあたしの名前を呼んだトワ。
その声を聞いた瞬間、堪えていた涙が堰をきったように溢れだした。


「……どうしたの?」

「っ……」


なだめるように、優しく優しくあたしを抱きすくめたトワ。
あたしはすがるようにその胸に顔を埋めた。


涙が落ち着くまで、トワはずっと腕の力を緩めなかった。
トクントクンって心臓の音を聞きながら、あたしは小さく言った。



「おじいさんが……」

「うん。一昨日、俺が看取った。穏やかな最後だったよ」

「……そう」



肩口でそう言ったトワの腕に力がこもった。
吐く息が白い。

寒い、寒い山の冬。

おじいさんがなくなって、トワはひとりでここにいたの?


たまらなくなって、唇を噛みしめた。
あたしは、そんな時に一緒にいてあげられなかった。

それが悔しかったんだ。





「代償の事、聞いた……」

「……」


少しだけど、トワの体がピクリと震えた。
あたしは腕の中からそっと顔を上げる。

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