青い猫の花嫁

「俺は真子が悲しい想いをしなければそれでいいんだ。
これで、いいんだよ」

なんで……?


「なんでぇ……」


悲しい想いなら、してるよ。
こんなの辛すぎるよ、トワ……。


トワの服を掴む手が震えてる。
ジワリと溢れだした涙が、視界を塞ぐ。


どうしよもない気持ちが、喉の奥に押し込まれたみたいに、うまく言葉が出てこない。

それでもあたしは、必死に声を吐き出した。



「よく、ない……。あたしこんなに、こ、こんなにトワが好きで……皆もトワの事思ってて、それなのに、ひとりで勝手に諦めて……そんなの、ずるい……」


「うん。俺、ズルいんだ。だからごめん」

「っ……トワぁ……」


謝ってほしいんじゃない。
そんな言葉が欲しいんじゃない。

空色の髪が、大好きな空色の髪が、涙で見えないよ……。



「俺は、忘れないから。絶対」

「……っ」


そう言って、トワが笑った。

ッ……!


――――ドン!

抱き締めようと伸びてきたその腕を、あたしは思い切り突き飛ばしていた。



「あたし、っ、あたしは……」


蒼穹の瞳が揺れる。
その瞳から逃げるように、あたしはトワに背を向けて走り出していた。



―――……ごめんなさい……。
ごめんなさい、みんな……。

もう、無理だ……。

トワの想いを受け止めるほど
まだ強くなれない……。

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