青い猫の花嫁
「だいたい予想はつくけど……どうしたのか、聞いてもいい?」
「……」
あったかいココアを買ってきてくれたナギさん。
それをあたしの手に持たせると、古びたベンチに腰を落とした。
「……みんな、知ってたんですか?」
その暖かさに、止まった涙が再び溢れだす。
ナギさんはあたしを見つめたまま静かに言った。
「トワを忘れちゃうこと?」
その言葉に、ビクリと体が反応した。
俯いたあたしに、ナギさんがニコリと笑った気がした。
「みんな、知ってる訳じゃないの。真子ちゃんみたいに全員が同じように代償を受けると思ってる人もいるよ。サワちゃんとか修也もそうだし、カナトもね?」
「……」
「人によっては、些細な事かもしれないけど。人によっては、すっごくツライ代償なんだよね。これって」
……。
唇をきつく結ぶと、ナギさんを見た。
そうだよ……あたしだけじゃない。
ナギさんだって、トワの事あんなに大好きなのに……。
それをずっと知っていて。
トワの事、それでも大好きで……。
それなのに、あたしは……。
頭の中の考えがまとまらない。
ナギさんはゆっくりと立ち上がると、あたしとまっすぐに向かい合った。