青い猫の花嫁
「真子ちゃん、あたしはあなたをずっと待ってた。
あなたが約束の人だとか、運命の人だとか、そういう意味で言ってるんじゃないよ?
トワの心を、優しく包み込んでくれる人を待ってたんだ。
あたしには無理だったことを、成し遂げられるのは、真子ちゃんだけなんだから」
「……ナギさん、でも……」
でも、あたしにも……
トワの心を溶かす事は、出来なかった……。
さっきのトワの言葉を思い出して、苦しくてホロホロと涙が伝う。
ナギさんはそんなあたしの頬に手を添えると、目を細めて笑った。
「もちろん、最初はなんなのこの子!こんな突然現れた子に大事なトワを渡せるかーとか思ってたけど、会うたびに変わってくトワを見てたら、そんな気持ちもどこかへいっちゃった」
ナギさん……。
「―――あなたなら大丈夫。自信持って。 ね?」
…………ダイジョウブ。
ナギさんの言葉は、雨が大地に染み込むように、あたしの心に広がった。
トワの様子が気になって来たけど、大丈夫だよねって、そう言ってナギさんは笑って帰って行った。
あたしの手元には、彼女の笑顔のように明るい、ひまわり色の傘。
再び静寂が戻った駅のホームで、あたしはしばらく雨を落とす空を眺めていた。
その時ふと、視線を感じた。
気が付くと、蒼穹の猫が、雨の中でちょこんと座ってこちらを見ていた。
…………トワ……。
猫はゆっくりと歩み寄り、あたしを見上げながらつぶやいた。
「 おいで 」