青い猫の花嫁
誰もいないトワの家は、雨の音だけが静かに聞こえていた。
煌々と火が灯る暖炉を見つめて、あたしは肩を抱いた。
「真子」
オレンジ色に染まるリビング。
冷えた体を温めようと暖炉の前に座るあたしのそばで声がした。
見ると、小さな猫の姿をしたトワが大きなバスタオルをくわえている。
あたしはそれを受け取ると、湿った肌を拭いた。
トワは、ただじっとそこにいて、あたしの事を見上げていて。
バスタオルをギュッと握りしめると、震える声で目の前に座る猫に声をかけた。
「……トワ、あたし、あたしやっぱりトワが好き。好きな人の事、諦めたくない。もう、自分の気持ちに嘘をつくのは、嫌なの……。……好きなの……」
今の、精一杯の、あたしの気持ち。
あたしの心が、少しでもトワに伝わればいい。
トワの心に、しみればいい。
何も言わないトワ。
それが、答えなの?
「……ッ……」
とめどなく溢れる涙は、雨のようにポタポタと頬を伝いペタリと座り込んだ、あたしの足に落ちる。
冷たい……。