青い猫の花嫁
正宗の願い

正宗さんは、ただ穏やかに微笑んでいる。

本当のお役目って、なに?
前にお花見の時に言っていた、“見届ける”とは違うんだろうか。


キョトンとして目を見張っているあたしに、正宗さんが口を開いた。



「さあ真子さん。 そのチャームについている石をこの式神に」

「え?」



この……ネックレス?


それは、あたしが誕生日に爽子からもらった猫のチャーム。
正宗さんが、ネックレスにするといいと言ってくれたものだった。

廉次さんのお店で買ったって、言ってたっけ。
あたし用の、特注だって。


慌てて金具に触れる。
そこで気付いた。

手が少し震えていた事に。

外すのに手間取っていると、それをトワが手伝ってくれた。



「あ、ありがとう……」


触れた指先が、そのままあたしの手を優しく包み込む。

オズオズと見上げると、口元を緩めたトワが、蒼穹の瞳を細めた。


“大丈夫だよ”ってそう言ってるみたいで、ふわりと心が軽くなる。




あたしの手の中には、ほのかにぬくもりを宿した猫のチャーム。
それをトワの大きな手が包み込み、そっと黒猫に差し出した。

猫はトテトテと歩み寄り、あたし達の手にそっと額を当てる。



――――その刹那……

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