青い猫の花嫁
「なに、かな」
「ボール……じゃなくて毬?」
煌びやかな糸で編まれた、毬(まり)。
見た事もないそれは、確かにあたしの手の中にあった。
顔の位置まで上げて、マジマジと見る。
月の光に照らされたそれは、キラキラとまるで宝石のように輝いた。
「きれい……」
思わずそうつぶやいた時、不意に何かの気配を感じた。
ハッとして、あたしもトワも同時に振り返る。
え?どうして、そこに……。
それは、闇にぼんやりと輝く蒼穹の猫だった。
「……トワ?」
「俺じゃない」
本物のトワは確かに横にいて、あたしの手をギュッと握ってくれている。
トワじゃない……。
じゃあ、もしかして……。
「あなたが……はじまりの……」
言うと、蒼穹の猫はうやうやしく歩み寄り、座り込んだままのあたしの膝の上に、その小さな手を乗せた。
頭を垂れた猫は、ゆっくりと顔を上げて星空を映した瞳を細めた。
「―――探しました。
みな、貴女様をお待ちしております」
「え?」
凛とした声。
猫はそう言うと、トテトテと先に歩き出した。
そして、振り返る。
「今宵は月が綺麗にございますね」