青い猫の花嫁
「これは、貴女の物ですね?」
「……ゆ、びわ……?」
蒼い石。
シルバーのリングにおさまったその石は、なぜかすごく懐かしい気がした。
「指輪は、満月にお願いして今朝出来上がりました」
「……え?」
満月に、お願い……?
正宗さん、何言って……。
ああ、ダメだ。
目眩がするし、ちょっと目がかすむ。
うーんと額に手を当てていると、正宗さんは心配そうに覗き込んできた。
「真子さん?少し気にあてられましたか?」
正宗さんはそう言うと、指輪のついたネックレスを首につけてくれた。
「すみませんでした。 力のないあなたには、時をさかのぼる事がどれだけ負担になるか、わかっていたのですが……。でも、それが僕のお役目でしたので」
「……時を?」
「はい。ああ…貴女のあの猫のチャームですが……」
「猫のチャーム……」
そこでハッとした。
自分が何かをギュッと握りしめていたんだ。
ゆっくりと手のひらをあけると、そこには正宗さんの言ってた猫のチャームが。
でもそれは、見るも無残にボロボロになっていた。
猫の瞳の蒼い石は、ひび割れてしまっている。
「その石も、僕のようにお役目を終えましたね」
正宗さんがあたしからそれを受け取ると、人差し指と中指を唇に押し当ててそれからフーッと息を吹きかけた。
それを合図に、猫のチャームは細かな粒になって消えてしまった。
――――……そうだ!